「浅間」(あさま)という言葉はどこからきたか? 

2.23日は富士山の日というので・・・

浅間山のアサマという呼び方は何故そう呼ばれるのか。

古くから様々な説が流布されてきていて、嬬恋ではガイドの間でアイヌ語に由来した説明をすることが多い。 浅間高原にある地名(例えば、カイシコ、ロンノトヤ、アテロなど)は特にアイヌ語に深く関係していた、と元学習院大教授の山本直文氏が嬬恋にもよく訪れて昭和40年代に出版しているので影響しているかもしれない。またその前に遡るとイギリス人考古学者マンローが「アサマ」はアイヌ語のアッサムで火を噴くの意だ(大正8年)と発表しているのでアイヌ語起源説を受け入れる素地がじゅうぶんあった。
こうしたアイヌ語起源説に対して物理学者だった寺田寅彦氏は、「アサマ」は南方系の言葉だという南方起源論を言っている。アソ(燃える)アスク(煙る)アス(煙)アサップ(煙)などの南方語からアサマ山、アソ山、ウス山などが付けられたと展開。
他にもアサマはインドの古語で「爆発する」「火を噴く」という語に起因する説などがあったり、馬来語(マライ語)との深い係わりも言われてきた。
「浅間」は、もともと富士山とその主祭社がなぜ「浅間神社」なのかということに関係して起源が語られてきた経緯があるので、これは日本語の起源とも係わっている側面があるということかもしれません。
近代の研究では伊勢の地に多い朝隈・朝熊(ともに「アサマ」と読む)との関連に注目されて、アイヌ語に語源を求める傾向はやや薄くなっているようだ。

さて、最近我が村では浅間山ジオパークにしようという活動を嬬恋・長野原町で一緒になって進めているが、当然その由来について話題となるが『日本百名山の由来』というHPの記載にも近い表現を踏襲し「アサはアソという南方語と同じように火山の意を表す言葉。マはアイヌ語で川のことだから「川を持った火山」、とする記述も登場した。けれど前述の諸説が定まらない状況に加え、信頼度の高いとされる地名学専門書「地名用語・語源辞典」でもアイヌ語説と朝隈に起因する説を併記している中で、少し大胆な説を挙げている。
長くなって恐縮だが、最後にお隣の軽井沢高校の昭和57年の教材資料に由来が載っていたので紹介しておきたい。(長野県郷土史家岡村知彦氏著書より引用)

マライ語のアサツは「煙」の意味。南方諸民族の間では煙を意味する言葉として、アス、アサウ、アターウ、アツッなどが使われている。「マ」はマライ語の母の意味であるからアサマは煙の母、あるいは「煙の女神」とも考えられる。一方でアイヌ語では噴火のことを「アソー」、場所の意味を「オマイ」で、阿蘇は噴火口の意味で、浅間は「アソーオマイ」で噴火口のある場所と言われる。

日本の地名には南方民族の言葉とアイヌ語に由来したものが多いとされる中で、浅間の語源・起源もいまだ古代ロマンの中にあって明察を得ないでいる。