「これより上に村なし、ここより水始まる」嬬恋の恵み

清流に自生するワサビに勝るものなし。

山里の春を実感させるワサビ(山葵)は、昔から湧水のあるところに自生するイメージが強かったせいか、子どもの頃からその清流の贈り物として特別な植物のように思ってきた。
花の咲く直前の柔らかな山葵を食べると、大人たちは決まって「春の香りがする」と言った。幼少の私は〈 春って食べられるの? 〉と思い、ワサビの味はするけど、どうしてこれが春なのか不思議だった。毎年そう思いながら食べていたが、いつしか忘れて大人になった。

湧水の豊富な村にはたくさん天然の山葵が自生していて、樹木の葉の出る前にどの植物や草より先に葵々と輝き、今が花盛りとなって清流の春をさきがけている。その春一番を頂くと、、、やはり春の香りがする。