高原の八十八夜の節目

嬬恋村の八十八夜

春から夏へ移っていく節目とされる八十八夜。嬬恋でもここを境に夏の準備に動き出します。浅間山に残雪の雪形「逆さ馬」がはっきりと現れるのを見て、田作業の苗代が始まり、そして馬鈴薯(ジャガイモのこと)の植え付けも始める目安となっていて、ここを境に今年の収穫への作業が始まるのです。
特産のキャベツはすでに植え付けが始まっていますが、標高のやゝ高いところに安心して植え付けが本格化するのもこれからです。よく「八十八夜の別れ霜」と言われますが、それでも時には遅い霜に見舞われる年もあります。今年は桜もほぼ終了し、高原の花、シャクナゲ(石楠花)が大前地区辺りまで咲き出しました。今年は花芽が多くひときわ鮮やで楽しめそうですから、花を愛でる人達から遅霜を案じる声も聞こえそうです。

季節の節目を祝う祭りが嬬恋では、大前地区で行われています。嬬恋の立春はまだ冬なので、それから八十八夜の節目が田畑の季節。山にいる神を田畑農作業の元に呼ぶ祭にあたりますが、5月2日と3日に行われた「八十八夜祭」には神楽獅子連を中心に笛、太鼓囃子連それに踊り子連が連なって、地区の七カ所で舞う形の道中舞いが繰り広げられますし、道中囃子が10曲ほど残されているといいます。真骨頂はやはり獅子舞ですが、四つほどの舞い方を順次見せてくれます。 大前の諏訪神社から神を迎え、氏子でありながら神の使者として舞う昇華は諏訪や出雲系に近いと言われています。 世俗的な地域おこしのイベントの祭ではなくて、素朴ですが古来の神を地域に招く祭事色を残した文化です。

(大前地区の八十八夜の祭、獅子は三頭繰り出し、写真は鈴舞です)