カラマツ(落葉松)その使い道

カラマツは扱いにくい劣等生か? クセは使い方で活きる!

高冷地の嬬恋村には杉やヒノキが育ちにくいから圧倒的に落葉松が多い。そしてカラマツ君は強いクセがあることから建材として利用から遠ざけられてきた。いわば木材界の劣等生の扱いで残念だ。成績表にも「繊維の強いねじれがあり、割れも出やすく、脂(ヤニ)分に手こずる性格」ってあるほど。これでは我がカラマツ君、立つ瀬がない。 そんなカラマツ君も大人になって成熟すると、針葉樹の中でも際立って強度、耐久性が強くなるから侮れない。そのために最近では脱脂技術が進みねじれを抑えられるようになってきたし、合板への利用も伸びていると聞く。昔は杭丸太のほかに電柱などに使われていたのに比べれば大分受け入れられてきた。さらに最近は尾瀬の歩道のように山や公園の木道はカラマツ材が主流になっている。耐久性があり長持ちするからだ。それからカラマツ君の名誉のために載せておきたい出来事を次に挙げておきたい。

◆76年間、丸ビルを支え続けた米松! 地下はカラマツの林だ。
およそ400年前は海だった東京駅前の軟弱基盤の上に大正2年、丸の内ビル( 地下1階地上8階建て)は建てられたがその基礎には多量の米松(オレゴン州産)が落葉松の替りに5,443本が打ち込まれた。杭の径が30㎝で長さ15mもの1,350本、長さ13.5mものが4,093本で合計5,443本が解体された1997年までの76年間、ビルを狂いなく支えてきた。しかも関係者を驚かせたのは76年たっても杭は生々しく腐食もせず回収されたのだった。乾燥して家具にも使われた。三菱地所はその原木から記念の鉛筆を作ったし、完成した新しいビルにその原木を2本展示している。
優れたカラマツはそれだけではない、イタリアの水の都ベネチアの街の基礎にも木材が打ち込まれていて今も街を支えている。その大半はカラマツだという。他にもある。改修されて人気の東京駅舎の地下は11,000本余の青森産カラマツが支えていて強度を保っている等々。明治から大正時代の波打ち際で地盤の弱い地下に膨大な落葉松が埋められて、まさに地下森林の世界だ。水に浸かっていれば半永久的に持つというカラマツは命を与えられて今も知られざる街を支えている。(上の写真:新丸ビルに展示された杭。千代田区観光協会より)

 バラギスキー場・冬のカラマツ